令和3年度の税制改正概要

1.所得税

(1) 住宅ローン控除

  • ① 控除要件の見直し
    • イ. 住宅ローン控除の控除期間を13年から1年延長
    • ロ. 令和4年末までの入居者を対象とする
    • ハ. 合計所得金額1,000 万円以下の者が適用を受ける場合について面積制限を緩和する(50 ㎡以上→40 ㎡以上)。

(2) 国や地方自治体の実施する子育てに係る助成等の非課税措置

  • ① 国や自治体からの子育てに関する助成(ベビーシッター・認可外施設の利用等)について、子育て支援の観点から所得税を課さないこととする。

(3) セルフメディケーション税制の見直し

  • ① セルフメディケーション税制の対象をより効果的なものに絞り、手続きの簡素化を行った上で5年延長する。
  • ② 効果検証のための指標を設定し、次回改正時にこの評価を踏まえ制度を見直す。

(4) 私的年金等に関する公平な税制のあり方

  • イ. 私的年金の拠出限度額をより公平な算定方法に改善する等の見直しが行われることを踏まえ、現行の税制上の措置を適用する。
    • (参考1)老後に係る税制についての検討
      • (イ) 働き方やライフコースが多様化する中で、働き方によって有利・不利が生じない公平な税制の構築が求められており、税制が老後の生活や資産形成を左右しない仕組みとするべく、給与・退職一時金・年金給付の間の税負担のバランスを踏まえた姿としていくように検討。
    • (参考2)諸控除のあり方の検討
      • (ロ) 給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の一体的な見直しなど令和2年分所得から適用となった改正の影響等も踏まえ、働き方の多様化を含む経済社会の構造変化への対応や所得再分配機能の回復の観点から検討

(5) 退職所得課税の適正化

  • ① 勤続年数5年以下の法人役員の退職金について、退職所得控除額+300万円を超える部分について2分の1課税を適用しないこととなっているが、この対象者を拡大し、法人役員以外の人の退職金についても、2分の1課税を適用しないこととする。

2.相続税

(1) 住宅取得等資金の贈与の非課税措置の見直し

  • ① 贈与税の非課税枠の1,500万円について、令和3年4月以降縮小予定だったが、令和3年末まで据え置く(面積要件について、住宅ローン控除と同様の措置を講ずる)。

(2) 教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し

  • ① 節税としての利用を防止する観点から、受贈者が贈与者の孫等である場合の贈与者死亡時の残高に係る相続税額への2割加算の適用等について、見直しを行った上で延長する。

(3) 国際金融都市に向けた税制上の措置

  • ① 就労等のために日本に居住する外国人が死亡した際、その居住期間にかかわらず、外国に居住する家族等が相続により取得する国外財産を相続税の課税対象としない。

3.法人税

(1) グリーン投資・デジタル投資等の産業競争力の強化に係る措置

  • ① カーボンニュートラルに向けた税制措置の創設(所得税も同じ)
    • イ. カーボンニュートラルに向け、脱炭素化効果の高い先進的な投資(化合物パワー半導体等の生産設備への投資、生産プロセスの脱炭素化を進める投資)について、取得価額の5%又は10%を法人税額から控除する又は取得価額の50%を減価償却費として計上する措置を創設する。
  • ② 企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を促進する措置の創設(所得税も同じ)
    • イ. 「つながる」デジタル環境の構築(クラウド化等)による事業変革を行う場合に、取得価額の3%又は5%を法人税額から控除する又は取得価額の30%を減価償却費として計上する措置を創設する。
  • ③ コロナ禍を踏まえた賃上げ及び投資の促進に係る税制の見直し(所得税も同じ)
    • イ. 雇用環境の悪化に対応するため、賃上げ・投資税制を、新規雇用拡大・教育訓練支援に着目した形に見直しを行う。
    • ロ. 中小企業全体として雇用を守りつつ、所得拡大を促すため、賃上げだけでなく、雇用を増加させる企業を下支えする観点から、雇用者全体の給与等支給額に着目した要件に見直す。
  • ④ 株式対価M&Aを促進するための措置の創設
    • イ. 企業の機動的な事業再構築を促し、競争力の維持・強化を図る観点から自社株式を対価として、対象会社株主から対象会社株式を取得するM&Aについて、対象会社株主の譲渡損益に対する課税を繰り延べる。

(2) 中小企業向け投資促進税制等の延長

  • ① 設備投資を促進し、経営基盤の強化を支援する等の観点から、中小企業の軽減税率の特例や中小企業投資促進税制等を2年延長するとともに、商業・サービス業・農林水産活性化税制について、対象業種を中小企業投資促進税制に統合する。

(3) 中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設

  • ① 中小企業の経営資源の集約化よる生産性向上等を促すため、M&Aを実施する企業の投資リスクに備える準備金制度(株式等の取得価額の70%以下の金額を積み立て、当期の損金に算入)を創設するとともに、前向きな投資を推進するための措置を講ずる。

(4) 国際金融都市に向けた税制上の措置

  • ① 投資運用業を主業とする非上場の非同族会社等の役員に対し支払われる業績連動給与について、一定の要件の下、損金算入を可能とする。

4.消費税

(1) 金密輸に対応するための消費税の仕入税額控除制度の見直し

  • ① より一層の金密輸の抑止を図る観点から、仕入税額控除の要件として保存が求められる売却した者の本人確認書類から、外国政府発行の書類等を除外する。

5.その他

(1) 車体課税

  • ① 動車重量税のエコカー減税について、全体として自動車ユーザーの負担が増えないように配慮しつつ、燃費性能がより優れた自動車の普及を促進する観点から新燃費基準への切り替えを行うなど所要の措置を講ずる。

(2) 電子帳簿等保存制度の見直し等

  • イ. 経理の電子化による生産性の向上、テレワークの推進、クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上のため、帳簿書類を電子的に保存する際の手続を抜本的に見直す。
    また、スキャナ保存制度については、ペーパーレス化を一層促進する観点から、手続き・要件を大幅に緩和するとともに、電子データの改ざん防止のための措置を取る。
  • (参考)記帳水準の向上等
    クラウド会計により手間や費用をかけず正規簿記を行える環境が整ってきていることを踏まえ、正規簿記の普及を含め、個人事業者の記帳水準の向上等に向けた検討を行う。