自賠責保険と労災保険のどちらが優先して支給されるか

会社に行く途中や帰宅途中で交通事故に遭ってしまった。そのようなとき、治療費や休業損害などの補償はどのようになされるのでしょうか?

通勤途中に交通事故にあった場合、その損害に対して、自賠責保険と労災保険のどちらが優先して支給されるのか?については、特に法律等で決まっているわけではありません。ただ、行政通達で「交通事故の場合は労災保険より自賠責保険の方が優先」と定められています。しかし、行政通達は役所の決まりごとですので、行政の職員の方々はそれに従いますが、一般国民はそれに拘束されません。つまり、どちらを使うかは本人の自由です。

では、実際に通勤途中に交通事故にあった場合、どちらを使えば良いのでしょうか?
通常は、自賠責保険先行で問題ありません・・・が、以下の場合は、労災保険先行にする必要があります。

  • ① 自分の過失割合が大きい場合(自分が加害者の場合)
  • ② 過失割合が確定されていない場合(相手方ともめている場合)
  • ③ 相手が無保険の場合
  • ④ 相手が自賠責保険しか加入していない場合

自賠責保険では、自分の過失割合が7割を超えていると補償が減額されますが、労災保険ではこのような過失割合による減額はありません。
また、相手が無保険の場合は当然ですが、任意保険に加入していない場合も、労災保険を先行させた方が良い場合があります。補償範囲や診療報酬の単価が違うからです。

労災申請が会社に与える影響

ところで、労災申請すると会社にとってデメリットがある、と思われている事業主の方も多いのではないでしょうか?

よく言われるのが、労災申請すると・・・

  • ① 労災の保険料が上がる
  • ② 労働基準監督署の調査が入る

ということですが、これらについては必ずしもそうではありません。

  • ① 労災保険には『メリット制』という制度があります。これは労働災害の発生の多寡により保険料が上下する制度です。しかし、従業員の数が100人未満の企業についてはこの制度は適用されません。また、通勤災害は保険料の増減に影響ありません。
  • ② 労働基準監督署の調査については、例えば死亡事故などの大きな災害や、事故の原因が会社の設備の欠陥による場合などに調査に入ることがありますが、ご本人の過失による場合や通勤災害であれば、まず調査は入りません。

逆に、労災が発生したのに労基署に必要な報告をしなかった場合は、『労災隠し』ということになり、悪質な場合は書類送検されるケースもありえます。

労働災害(通勤災害)は頻繁に起こるものではありませんので、いざ実際に起こった際、どう対処したらよいかわからないことも多いと思います。そのような場合はぜひ、ご相談ください。